特定配当等・特定株式等譲渡所得の課税方式選択のための手続きの簡素化
上場株式等の配当所得の課税方式には、①総合課税、②申告分離課税、➂申告不要制度があります。この課税方式の選択における所得税と個人住民税での関係について、平成29年度の地方税法の改正で、解釈の確認と言える規定が設けられました。すなわち、上場株式等の配当所得や源泉徴収選択口座内の譲渡所得等について、所得税と個人住民税とで異なる課税方式を選択できる事が明確化されました。
手続きの煩雑さ
しかし、所得税の確定申告書の住民税に係る記載欄には、住民税での課税方式の選択欄がありません。
従って、所得税と住民税で、異なる課税方式を選択する場合には、個人住民税納税通知書送達日(5月下旬頃)前に、所得税とは異なる課税方式選択の旨を伝える申告書等の提出が必要でした。
申告不要等の有利不利
課税総所得金額が一千万円以下の場合(上場株式等の譲渡損失なし)であれば、所得税では総合課税、個人住民税では申告分離課税又は申告不要制度を選択するパターンが一般的には有利です。
ちなみに、後期高齢者保険料や国民健康保険料の負担も、個人住民税に係る申告による所得をその料額計算の基礎としていますので、課税方式の選択の効果はここにも及びます。
手続きの簡素化
なお、平成の終わり頃、この課税方式選択に係る住民税額や保険料額の長期に亘る決定誤りがあったと公表する自治体が続出していました。これを承けて、日本税理士会連合会は2019年7月22日提出の「税制改正建議書」の中で「上場株式等の配当所得等に関し、個人住民税において所得税と異なる課税方式を選択する場合の申告手続を簡素化すること」を申入れていました。令和3年の税制改正大網では、個人住民税において、特定配当等及び特定株式等譲渡所得金額に係る所得の全部について源泉分離課税(申告不要)とする場合に、原則として、確定申告書の提出のみで申告手続が完結できるよう、確定申告書における個人住民税に係る附記事項を追加する、とされ、税理士会の要望が実現しています。
具体的な手続方法
具体的な申告不要の方法ですが令和3年分の所得税確定申告書の住民税欄の附記事項の「特定配当等・特定株式等譲渡所得の全部の申告不要」欄に〇を記入します。この場合には原則としてお住まいの市区町村に対する住民税の申告書の提出は不要となります。