中小企業賃上促進税制適用の留意事項
雇用者給与等支給額が前期雇用者給与等支給額を超えている事により、その超過差額の最高45%の税額控除額が算定されるものの、法人税額の20%を控除上限とするとの制限規定で控除限度超過額が生ずる、というのは通常多いケースです。
今年の税制改正で、中小企業限定ですが、先の税額控除限度超過額は、5年間の繰越控除が出来ることとされました。その適用に当たっては、賃上げ促進税制の別表を作成提出し続ける事が要件となっています。繰越欠損金の発生年や繰越欠損金があるためにゼロ申告となっている年でも、賃上促進税制税額控除限度超過額発生年となる事は通常の事なので、ゼロ申告書でも賃上促進税制の別表の添付をする事になりそうです。
従来においても、ゼロ申告の年でも税務調査で納税額が出ることになる可能性がある場合に備えて、法人税申告書に賃上促進税制の別表を添付しておき、税額控除の適用の可能性を担保しておくべき、とは言われていました。今後は、このようなリスク管理的な配慮での添付の必要性なのではなく、5年間の内に繰越限度超過額の利用の機会が生じたりすれば、税額控除の適用を受けられるものなので、添付洩れは有ってはならない行為となります。
本年改正の賃上促進税制での5%上乗せ要件の「くるみん」「えるぼし」認定の要件内容は、
①プラチナくるみん、②プラチナえるぼし、➂13条くるみん,④9条えるぼし、の4種類です。
①と②のプラチナ認定は最上級の認定で、一度受けた認定で毎年の適用要件を充足します。
➂と④は基準適合した「くるみん」と「えるぼし」で、認定を受けた年のみが要件充足年となります。
ちなみに、「くるみん」とは、仕事と家庭の両立支援対策を課題とする次世代育成支援対策推進法に基づく認定制度です。「えるぼし」とは、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)に基づく認定制度です。
「くるみん」「えるぼし」ともに、都道府県労働局への申請により、厚生労働大臣の認定を受けることができる制度です