上場株式等の所得税・住民税の課税方式の統一
令和5年度分まで個人住民税の税務申告では、上場株式の配当及び株式等譲渡所得金額に係る所得の全部について、所得税での申告内容と異なる源泉分離課税(申告不要)を選択することが出来ました。その場合に、令和3年分、令和4年分の所得税の確定申告書では、確定申告書における個人住民税に係る附記事項へのみで、翌年度分の住民税の申告手続きが完結できるように、手続きが簡便になっていました。課税所得900 万円未満の場合には、通常は、所得税では配当控除適用の総合課税を選択し、住民税では申告不要の選択をします。
課税所得900万円未満の場合、配当控除率適用の所得税の実質税(23%-10%)>源泉税15%)をみると、所得税では有利選択であることがわかります。しかし、配当控除率適用の住民税の実質税(10%-2.8%>源泉税率5%)をみると、住民税では不利選択であることがわかります。でも、全体を統一すると、(23%-10%+10%-
2.8%>源泉税率20%)と、少しだけ不利選択になります。手続きは簡便でも、有利不利選択には実際の所得税額と住民税額の合計を比較する作業が必要になり、やや複雑になります。
なお、本当の有利不利の選択は、所得税額と住民税額の合計を比較するだけでは済みません。住民税の合計所得金額は、国民健康保険料・後期高齢者医療保険料・介護保険料等の料額に直接連動しておりますし、さらに、医療機関等における窓口負担割合、高額療養費自己負担限度額等にも影響しています。これらを含めて判断しないと本当の有利不利の判断にはなりません。
手続き簡素化された所得税住民税有利不利選択の制度は内容が複雑すぎたのか、今年の所得税・住民税の確定申告を最後に廃止され、所得税と住民税との課税方式は統一される事になりました。それでも、有利不利の選択の課題はなお残っています。総合課税(配当控除)と申告不要(源泉分離)との選択の課題です。特に、上場株式などの譲渡損失の損益の譲渡損失の損益通算や損失の繰越控除の適用が受けられる場合には、相変わらず有利不利選択判断をする課題が残っています。
上場株式等の配当等につきましては所得税と住民税で異なる課税方法を選択できるのは令和4年分の所得税確定申告が最後です。令和5年分以降は所得税と住民税で異なる申告方法を選択することは不可となりますのでご注意ください。