消費税の免税事業者が行った申告の有効性について

免税事業者が誤った申告・納税をした場合

もし免税事業者が判断を誤って、消費税の申告・納税をした場合は、どうなるでしょうか。無効な申告だから、取下げ依頼書の提出をしなさいとの慫慂がなされ、その後、過誤納金の返還がなされるものと思われます。

免税事業者が誤った還付申告をした場合

それならば、免税事業者の還付申告でも同じはずと思われますが、裁決事例や訴訟事例を見ると、扱いが異なっていることが伺えます。まず、還付申告に対しては有効な申告とみなして、控除対象仕入税額0円、控除不足還付税額0円とする修正申告を慫慂したり、更生処分をしています。判決文には、法的義務の無いまました申告にも形成的効力があるから、具体的納税義務が成立するので有効な申告になる、と書いてあるものもあります。

免税事業者のする還付申告の例は少なくありませんが、実際に還付が行われているケースは全くなさそうで、還付保留のまま、ゼロ申告の修正申告・更正処分がなされ、その上で保留還付金の返還である「納税」と当初還付申告による「還付」とを相殺関係とするようです。

賦課処分

ただし、そこで終わるのではなく、修正申告・更正処分に伴う過少申告加算税や重加算税の賦課が後からついてきます。免税事業者還付申告に係わる税務係争のほとんどは、この賦課処分を不服とするものです。提出期限後すぐに誤りに気付き、自主的に申告取下げの依頼書を提出したケースでも、撤回行為がいつでも認められるものではなく、本件は、そのような場合には該たらない、と切捨てられています。

実際に還付がなされてもいないのに、こういう申告は許せん、とばかりに行政も司法も相当に厳しい対応をしています。判決文には、過少申告加算税の制度は申告納税方式の下において、納税者の申告は納税義務を確定する上で重要であり、適正な申告をしない納税者に対して一定の制裁を加え、その申告秩序の維持を図ることを目的としたものであるから、過大な還付金を申告した場合には、還付金が現実に納税者に還付されているかどうかに拘わらず、同申告によって過少申告加算税が賦課されるのは当然だ、と書かれています。

おわりに

消費税については、必ずしも免税事業者の方が有利であるとは限りません。設備投資などで課税売上よりも多い課税仕入が生じることにより消費税の還付となる場合があるからです。

免税事業者が課税事業者になるには、消費税課税事業者届出書を提出すればいいのですが、一度課税事業者を選択すると一定の期間において免税事業者に戻ることができません。

課税事業者となるか否かを決める場合には、メリット、デメリットを考慮したうえで慎重に判断したほうがいいでしょう。

 

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